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佐「なんでこんなことになっちゃってんの?」
「グシャグシャじゃーん」っていつも子ども達にしてるみたいに優しく涙を拭ってくれるさっくん。
佐「鼻かみな?」
差し出してくれたポケットティッシュを受け取ってズビズビ鼻をかむ私は色気の欠片も無いと思う。
だから彼も…
隣に居た子、凄く綺麗な子だった。
思い出してまた心臓がジクジク痛み出す。
「ひっ…うっ…」
佐「よしよし。悲しいねぇ。とりあえずこっちおいでよ」
「立てない…」
樹くんの前では見栄張ったけど、正直羽目を外した体はアルコールに侵されてて。足に力は入んないし頭もグラグラする。
「ごめ…」
佐「ん、おいで」
脇の下に手を入れられて、ヒョイって軽々持ち上がった体。力の入らない体はポスって簡単にさっくんに寄りかかる。
佐「抱っこする?」
「大丈夫…」
佐「にゃはっ 俺抱っこのプロなのに〜」
いくら子ども達に大人気の佐久間先生でも、いい歳した大人が抱っこされる図を想像しただけで恥ずかしすぎて涙も引っ込んだ。
「肩…借りたら歩ける……」
佐「肩くらいいくらでもどーぞー」
ほわほわ。
いつもとおんなじ優しいさっくん。
だけど私が転んだりしないようにグッと肩を支えてくれる力は男の人で、不思議な感じ。
さっくんのこと男の人として見てなかったわけじゃないけど、限りなく女の子の友達みたいな気分でいつも接してたから。
抱っこなんてされてたら余計にさっくんの力強さを意識してたのかな。
佐「ほい!こちら佐久間タクシーです!」
「タクシーなのに前良いんですか?」
佐「お客さん可愛いんで特別です!」
「なんかやだー…」
佐「こいつー!人が善意で言ってんのに!」
「ふふふ」
いつものくだらないやり取りにホッとする。
占い通りの散々な1日だったけど、こうして救いがあるなら…実質11位くらいかも。
佐「…やっと笑った」
目尻を下げて、優しい声でさっくんが言うからその言葉でまた泣いてしまいそうになる。
苦しい時に優しくされるとなんか変に沁みちゃうんだよ。
「っ…」
鼻を啜る私に気付かないフリをしながら。
佐「特別サービスでシートベルトもしてあげんね〜」
ふわって目の前でさっくんの猫っ毛が揺れた。
佐「ぜーんぶ今日に置いてっちゃいな」
「…うん」
頭の上にポンと置かれたあったかい手。
車がゆっくり前に進んだ。
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あむ(プロフ) - 名無しさん» ありがとうございます!暖かいお言葉嬉しいです^ ^更新がんばります! (3月27日 13時) (レス) @page34 id: 3fabfc8fab (このIDを非表示/違反報告)
名無し(プロフ) - お話の流れと展開が好きです (3月26日 21時) (レス) @page36 id: 5ebabfabca (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あむ | 作成日時:2024年3月18日 23時