最終チャンスやぞ(2023) - nagase ページ41
( you side )
【飯、食いに行こう】と廉くんから連絡が来たのは少し前のことだった。
お互いが大阪にいた頃ほどではないけれど、
同期である彼とご飯に行くことは少なくない。
昔は大吾くんや正門と複数人というのが多かったけれどここ数年はもっぱら東京仕事の時に会うことが多いからサシ呑みも慣れたものだ。
お互いに二杯目のお酒に入り、ほどよく最近の話をしたあたりで蓮くんが改まったように口を開く。
永瀬「なあ」
『なに、改まって気持ち悪』
永瀬「お前、正門に気持ち伝える気ないん」
『はあ!?』
直球ストレートな問いかけに梅酒でむせる。
ゲホゲホと息を整える私を見て「汚いなあ」と蓮くんは眉間にシワを寄せた。
『蓮くんが変なこと聞くからじゃん』
永瀬「今更やろ」
『私と正門は同期で、』
永瀬「お前な。お前の気持ちなんて俺と大吾はずっと知っとんねん」
『……』
隠せているとは思っていなかった。
二人は私とも正門とも近くで育ってきたようなものだし、
他の誰に隠せていようとも、
この人達に隠せているとは微塵も思っていない。
永瀬「デビュー決まったら、また言えなくなるやろ」
『……』
また、という言葉に心臓を掴まれてたような気がした。
何度、諦めたと思い込んだって
気持ちを終わらせたと思ったって
ずっと失くせていない感情くらい自分でも分かっている。
デビューが決まってからというもの、
また忘れなければ、置いていかなければという焦りが増しているのも事実だ。
廉くんはそれも分かって言っていんだろう。
永瀬「それでええん?」
もう何年も前、
人生初彼氏ができた時にも廉くんは同じように、
正門のことは、
「ええんか?」
という質問をしてきた。
あの時私はどう返したんだっけ?
『……困らせたくないんだよ。それこそ今更。私の気持ちが良規にとって良いものでも、答えられないものでも、どうとったってこの仕事にプラスにならないでしょ。そんな気持ちを伝えられて、どう動いたって困らせるのが目に見えてる。それに私には他にも大切な人たちがいるから』
廉くんの目を見て素直に返したつもりだったけど、彼は「気持ち悪いなあ」とのんきそうな声を出した。
永瀬「正門の気持ちをお前が決めつけんなよ」
声色と合っていないように、
廉くんは少し怒ったような顔をしていた。
この人は私の大切な同期であると同時に、正門の大切な同期だ。
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作者名:くー | 作成日時:2023年11月15日 12時